MADE IN CHINA 買うことの意味
沖縄・石垣港に到著し海保の巡視船「よなくに」(右)に橫付けされた中國漁船(8日午後、沖縄県・石垣島で、本社機から)=田中秀敏撮影
先日の尖閣沖での中國漁船と海保船との衝突事故、そしてその後の中國の対応、どう思いましたか? 私は正直、非常に割り切れない気持ちになりまし
た。それに拍車をかけたのが、理不盡なことをはねつけられない日本の現狀です。腹が立つやら情けないやら、子供だったらかんしゃくを起こして泣きたいくら
いの気持ちです。
中國の対応は、日本がそのほとんどを中國からの輸入に頼っているレアアースの禁輸措置(中國は禁輸していないと公表)で、日本の産業界は真っ青に
なりました。それ以外にも私としては納得できない(承服できない)ことが次々に起きて、あっさり那覇地検が中國漁船船長を釈放です。
今回の一連のでき事に関して、マスコミや野黨、一部與黨も、総理や日本の政治の在り方を批判しています。それはそれで良いと思いますが、私たち日本國民自體の中國との向き合い方というのはどうなんでしょうか。
中國からのアパレル依存でお手上げ?
日本大使館前で抗議活動を行う人たち(8日午前、北京で)=青山謙太郎撮影
現在のファッション業界における中國は、非常に大きな意味を持っています。日本で流通している衣料品のうち、低~中価格品のほとんどは「MADE
IN
CHINA」で佔領されています。仮に今、中國が衣料品の輸出を禁止にしたら、日本の大手カジュアルメーカーや専門店は、あっという間に企業存亡の危機に
直面し、ほとんどが倒産するでしょう、それほど衣料品生産の中國依存度は高いのです。その點ずいぶん前から生産拠點を中國以外の國にシフトしているユニク
ロさんは立派です、どんどん生産の中國依存度は低下しています。
最近のファッション業界では、生産のみならず販売までも中國市場を頼りにしている狀況です。今回の事に限らず、中國における衣料品生産はリスクが
増しています。一つは人件費の上昇、もう一つは労働力の確保の難しさです。自動車産業等に比べると、衣料品生産の現場は恵まれた労働環境とは言えません。
特に、日本向けの縫製工場は、安い賃金、長い労働時間、良いとは言えない労働環境です。安い、きつい、汚い、の3拍子が揃っていると見る向きもあります。
當然、労働力の確保は難しいものになり、最初は中國の沿岸部にあった生産基地はどんどん內陸部になっているのが現狀です。
良いものを安く、消費者が望んだ中國製
上記の理由から、衣料品生産各社は中國以外の生産基地の確保に向かっており、ベトナムやミャンマー等も増えてはいますが、まだまだ中國頼みの現狀
は変わりません。しかし、衣料品の中國依存體質は、結果的にメーカーが求めたことではありますが、本質的には私たち日本の消費者が求めたことなのです。私
たち消費者が、ファッションにより安く、より早く、を求めた結果なのです。ちなみに今日の私のファッションの生産國をチェックしてみたところ、Tシャツ
(USA)、長袖シャツ(中國)、ライダースJK(日本)、デニム(日本)、ベルト(フランス)、シューズ(フランス)ソックス(中國)アンダーウェア
(中國)と、MADE IN CHINAが3アイテムもありました。
今の日本で普通に服や服飾雑貨を購入した場合、MADE IN CHINAは避けられないのが現実です。昔と違いMADE IN
CHINAは粗悪品ではありません。それは先進國から裁斷や縫製ミシン等の機械を送り、現地の技術者を先進國の技術者が指導してきたからです。これは、良
いものを安くという日本の消費者の要望にメーカーが必死になってこたえたもので、競爭を生き抜いくための手段でもあります。その恩恵を受け、今私たちは安
い衣料品を手にできているのです。
買う前に原産國を確認して
しかしあまりに中國に依存してしまうと、活用していたはずの中國の生産機能が、生産側主導の生産機能に変わってしまい、生産サイドの顔色をうかがいながら物を作るという構図になってしまいます(もうなっているのかもしれませんが)。
そうならないためには、私たち消費者自身が考えなければならないこともあります。過去、日本の消費者が農薬野菜や毒入り餃子等の食の安全に対して
敏感に反応したように、今MADE IN CHINAというもの全般に対して考える時期かもしれません。MADE IN
CHINAの衣料品を全面的に否定するつもりはありませんが、あまりにも依存してしまうのもいかがなものかと思います。
これから衣料品や衣料雑貨を購入する際、原産國を一度確認してみませんか。もしそれがMADE IN
CHINAであるならば、それなりの覚悟を持って購入するという心構えが必要なのかもしれません。安い物という目先の利益にとらわれすぎると、大きなものを失ってしまうかもしれません
平井義裕
1958年生まれ。ファッションビジネスコンサルタント。大手百貨店勤務を経て、1993年CONVS
INC.設立 代表取締役。延べ3000店舗以上の店舗コンサルティングや、數多くのファッションブランドの立ち上げ等、幅広い分野で活躍中。「売れるも
のには必ず理由がある」をモットーに理性と感性を融合させたコンサルティングを行っている。
(2010年09月28日 読売新聞)
http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/fashion/100928.htm?from=yolsp